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少女官能小説作家乾しずくの日常

駆け出し小説家乾しずくのブログです。

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 あのひとの胸板に唇をつける。
 少し汗の味のする肌を吸って、でも跡が残るぎりぎりのところで思いとどまる。
 短いあえぎ声。
 繰り返す壊れた蒸気機関のようなその声にあわせて、あのひとの指はもっと速くなる。
「きもちいい」
 わたしは伝える。
「いい・・・いいの・・・きもち・・・いいよう・・・」
 後ろから私の丸いラインに沿って、てのひらがせわしなく動く。
 ゆびが、はいってる。
「いい・・・いいよう・・・」
 泣くように、鳴くように、かぼそい声で伝えると、耳を唇が噛んだ。
 それがまた、たまらなくよくて、
 わたしはあのひとの胸の上で踊る。
「いい・・・いいよ・・・い、いっちゃう・・・いっちゃうよう・・・」
 わたしは鳴く。
 きっと上手に鳴けている、はずだ。
 だって本当に気持ちいい、気持ちいいことを伝える、そのことはそんなに難しくはないから。
 あのひとが激しく指を動かして、私の水音が激しくなって、水のばしゃばしゃする音が聞こえて、わたしは溺れそうになって、何も、何も、なにも、なにもかんがえられなくなって、あたまのなかがまっしろになって
 
 ちいさなひめいをあげるのだ。
 
 あのひとがぎゅっとわたしをだきしめてくれてかるくとんだあたまの線がだんだんと繋がってきて、わたしはいつものわたしに戻る。
 あのひとが頭をなでてくれる。
 
 今日のわたしはきっと、うまく鳴けた。
 
 でも、こんなに上手に鳴けるのに、
 小さく「好き」と呟くことは、なんでこんなに難しいのだろう。
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